タロット占いの詳しい解釈と意味 大アルカナ『吊された男(The Hanged Man)』

タロット占い

ライダーウェイト版大アルカナ13番目のカードは、『吊された男』(吊し人)です。

与えられた数字の『Ⅻ』は、”十分すぎるほどたっぷりしている”という意味の”十二分”という言葉があるように完成を超えています。古代より暦や星座・方位・千支などにも使われ、生活に広く根付いた基数であるとともに調和を意味する数字です。タロット占いでは、男性性と女性性が合わさった『Ⅹ』から潜在意識を意味する『Ⅱ』に到達したことを表しています。それでは、詳しく読み解いていきましょう。

タロットカード『吊された男』の説明と解釈

『吊された男』は、手を縛られて逆さづりになっている若い男性が描かれています。一見するとネガティブな印象を受けるカードです。でもよく見るとと彼は苦しそうではありません。不思議です。占者によっては苦しそうな印象のまま悪いイメージで解釈されることもあるのですが、実際は深い意味を持ち、誤解されやすいカードとも言えます。

背景は、中間色のグレーです。白と黒の相反する性質の中立にいることを表しています。

T字形の樹木には、葉が青々と生い茂り、あふれる生命力を感じます。T字形は、エジプト十字とも呼ばれる古い形の十字架で、タウ十字を模しています。まっすぐと空に伸びている途中で切られ、その切られた横木が接合されてできたものです。切断という状態は、こころが「ポキッ」と折れるような経験や自分の意志を貫きとおせないことを表しています。それでも枯れずに生き生きとした葉を茂らせている木は、経験を糧に立ち直っている証しです。

左右の枝葉が太陽とは逆の下側に生い茂っているのは、ものごとの矛盾と太陽光のようなエネルギーが男性から発せられていることを示しています。

若い男性は左足だけをロープで縛られ、タウ十字の木から吊るされています。
彼は、北欧神話の最高神オーディンがモチーフとされていますが、十字架を背負わされたイエス・キリストのような雰囲気があります。神との一体化を果たすために自ら進んで自分の身を犠牲にしているようです。

黄色いロープと黄色い靴からは明るいエネルギーを感じることができます。ロープは、彼を唯一支える命綱であると同時に信念です。気高いこころだけが彼を支えています。

真っ赤なタイツの足は、左膝を曲げて、卍(まんじ)を表現しています。赤は情熱と生命エネルギーの色であり、卍は古代ギリシアでは太陽の光の象徴です。

身に着けている衣服の青色は、精神性と鎮静を示しています。

赤と青の組み合わせは、真逆の性質を意味し、精神的な葛藤があったことを想わせます。

両手は、後ろで縛られて自由にならず、どうにも手出しができません。

木から吊り下げられて身動きも難しいとなれば、誰が見ても苦しい状態のはずです。なのに彼は、穏やかな表情をしています。まるでその状況を自ら望んだかのようにも見えるまなざしです。

輝く後光は、彼が普通の人間ではないことの証しです。葉っぱは、後光に向かって勢いよく伸びています。

彼は、葛藤を通り越して諦めの極致に達し、放心状態なのかもしれません。
あるいは、過去の重荷から解放され、安堵しているのかもしれません。

どちらにしても困難からは、離れているようです。

穏やかに静観している彼の魂は、神の領域に入るほど高い次元に達しています。樹木を活性化させるほどの強いこころの持ち主であることを物語っているのです。

霊的に高いレベルのこころには、もはや迷いがありません。思い悩んでいたことや不安から解放され、魂が救済されています。

周囲で起こる世俗的なことがどんなに彼をがんじがらめにしても、こころだけは支配されません。彼は、普通の人間の世界にいないのです。
いくつもの試練を乗り越え、葛藤から解き放たれたこころの中には、重力のない宇宙と同じような世界が広がっています。

受難は、時として精神的に成長してエゴを捨てる絶好のチャンスになります。単なるイニシエーション(通過儀礼)として自分を犠牲にしてでも慈愛のこころを持つことで、神の領域に入る高い次元の精神性を手に入れることができます。吊るされた男は、太陽のような存在となり、自分の人生を自ら照らしています。困難を乗り越えて、魂の成長と救済を表したカードなのです。

『吊された男』正位置の意味

『吊された男』は、吊るされて身動きができないほどの辛い状況を意味します。

例えば、自分が大切にしているものをあきらめたり、自分が犠牲になったりする場合もあります。そういう意味では、一般的にはあまりよくないカードと考えられても仕方がないカードと言えます。

しかし、ピンチがチャンスになるカードです。とらえ方を前向きに変えることで、良い方向に向かう可能性を秘めています。

しがみつきたいならあえて離れる、身動きができないなら流れに任せてみる、自我が強すぎるなら周囲に尽くすことで、解決策が見つかり、道が開けていきます。

・宙ぶらりんな状態になります。
・どんでん返しがあります。
・身動きがとれません。
・別の視点から物事を見る必要性に迫られます。
・自分の内側とつながることが大事になります。
・価値観の見直しを迫られます。
・優先順位が変わります。
・ものの見方が変わります。
・困難からたくさんのことを学べます。
・明らかでないぼんやりした状況です。
・成り行きに任せます。

その他のキーワード
・失意・試練・修行・忍耐・自己犠牲・直感・英知・慎重・努力・奉仕・試練・抑制・妥協・着実・優柔不断・逆転・正反対・一時中止・手放す・献身・異動・気の迷い・束縛・逮捕

『吊された男』正位置の具体的なリーディング例

人間関係全般
問題が起こり、身動きが取れません。慎重に行動してください。他人を思いやり、前向きに乗り越えることで、道が開けていくでしょう。

パートナーがいる場合…思うように2人の関係が進みません。もし問題があるなら、精神的に成長する機会になります。

パートナーがいない場合…出会いがあってもあまり期待できません。小休止して、自分自身をかえりみるときかもしれません。

こころに思う人がいる場合…中途半端な状態にこころが荒みそうです。自分のこころに目を向け、精神的な充実を図ってください。

仕事面…現状の見直しを迫られる事態になりそうです。異動や転職の場合、今とは正反対の仕事内容になるかもしれません。

健康面…病気や怪我で動けなくなるかもしれません。長期の入院も考えられます。

経済面…今までのやり方を再考して、納得した方法を見つけましょう。

『吊された男』正位置のまとめ

新しい何かを手に入れるためには、慣れ親しんだ他のものを手放さなければならないときがあります。

なのにどうしても執着してしまい、いつまでも悶々としていると、こころはますます独りよがりに陥っていきます。

困難な壁にぶち当たったときこそ、自己中心的な考え方は控え、周囲を思いやるこころを育てるときです。

高い精神性は、事態を方向転換させ、打開策の発見へとつながっていきます。

こころの強さは、勇気を出して試練を乗り越え、成長の糧にしていく前向きさから得られるものなのです。

『吊された男』逆位置の意味

・宙ぶらりんが終わります。
・嫌々やらされている心境です。
・自分本位です。
・反抗心を持っています。
・じっとできません。
・自己保身に走ります。
・骨折り損のくたびれ儲けです。
・欲望に負けます。
・一時的な気の迷いがあります。

その他のキーワード
・やせ我慢・投げやり・自暴自棄・徒労・片思い・プライド・実利主義

『吊された男』逆位置の具体的なリーディング例

人間関係全般
自分のことしか頭になく、周りのことまで考える余裕がありません。ネガティブな印象を周りに与え、人が遠ざかります。

パートナーがいる場合…ストレスが溜まり、自己主張が強くなりそうです。

パートナーがいない場合…行動を起こしても、いい結果には結びつきません。

こころに思う人がいる場合…片思いの状態に疲れが出ます。投げやりに気持ちになりそうです。

仕事面…頑張っただけの成果が期待できません。思うような結果が得られず、やる気を失いそうです。

健康面…暴飲暴食に走ったり、不摂生な生活にはまります。体調を崩す前に立て直す努力をした方が良さそうです。

経済面…感情のままあまり考えずに散財しそうです。気を引き締めましょう。

『吊された男』逆位置のまとめと対策

このカードは、逆位置になっても似たような意味を持ちます。

ただし、プライドや自己中心的な考え方が邪魔をして、自分のやり方に固執してしまいます。

相手のことを思っているつもりでも、見返りをもとめた計算づくな意識が隠れていそうです。余裕のないこころや不純な動機からは、ものごとを改善する知恵は生まれません。

状況を変えたいのなら、今のままではうまくいきません。

一度冷静になって、自分の本当の気持ちや問題の本質を客観的に確認してください。

自分で分からなければ、信頼できる人に聞いてもいいでしょう。

その上で、固執している考えややり方を一旦手放してみることです。意外と思っていることとは正反対なことが良い解決策になることもあります。

どうせ頑張るのなら、努力のしがいがある方法を見つけましょう。

タロットカード『吊された男』のまとめ

『吊された男』は、不思議なカードです。苦しい状態のはずなのに何かを悟ったような表情をしています。まるでこの世の矛盾を象徴しているかのようです。

彼は、十字架にはりつけになったイエス・キリストをイメージさせます。神の偉大な力は、精神的および肉体的苦しみにあった時こそ、利他心をもつことで与えられるのです。

ものごとは、執着すればするほど膠着状態に陥っていきます。保身に走れば走るほど、周りからは疎まれ、邪険に扱われてしまいます。また、正しいと思っていることや当たり前のことが最善ではなかったり、意外なところに真実が隠れていることもあります。

にっちもさっちもいかないときは、一度、立ち止まって冷静になると意外とスムーズに動き出すものです。固執しすぎて行き詰ったときは手放し、行動したいときは静かに待つことを身につけましょう。それが本当の意味でいう勝利者への近道となる方法です。

”人生の幸・不幸は予測しがたく、幸運も喜ぶに足らず、不幸もまた悲しむに当たらない”という意味の”人間万事塞翁が馬”ということわざがあります。

簡単に言うと何が人の幸せや不幸につながるか分からないということです。

目先のことに一喜一憂するよりも謙虚に生きることが一番なのかもしれません。

『吊された男』のカードは、自己犠牲を成長のチャンスにし、どうしても解決できない問題は神の手にゆだねて信じて待つことの大切さをわたしたちに教えてくれているのです。

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